コンサルが見てきた、会社にしがみつくことの大きなリスク

サバイバル術

終身雇用の崩壊と言われて久しいですが、いつ会社からほっぽり出されても万全の備えができている、という方は(私も含めて)案外少ないのではないでしょうか。漠然と自分の力だけで生きていけるように準備しておかねばいけないと思っていても、目の前に危機が迫るまではなかなか行動に移せないのが人の性ではないでしょうか。

そんな時に思い出すのが、過去に関わった事業譲渡に関するプロジェクト経験です。海外企業が、とある日本企業の不採算部門を買うか買わないかを判断するためのデューデリジェンスを行うというプロジェクトであり、そこでの会話を思い出すたびに「自分のキャリアは自分でしっかり育てていかないとな・・・」と震え上がってしまいます。会社にしがみついてきた結果、その会社の人たちが最終的にどのような扱いとなってしまったか、ご紹介したいと思います。

※プロジェクト内容は、ご紹介したい趣旨を損ねない程度に改変して記載しております。

もはや「ブランド」だけにしか価値がない企業

件のプロジェクトは、長年赤字に苦しんでいたとある日本のメーカーにまつわるものでした。様々なテコ入れ施策にも関わらず赤字を脱出できなかったそのメーカーは、期末を迎えるまでに債務超過に陥ることが確実と言えるような財務状況でした。しかし、そのメーカーの製品は市場での認知度が非常に高く、ブランド力だけは色あせないままでした。

当該企業は、その色あせていないブランド力にかけて何とか事業の売却をできないかと画策しますが、なかなか話がまとまらなかったようです。最後の最後の頼みの綱として交渉のテーブルについたのが、とあるヨーロッパ企業でした。そのヨーロッパ企業とは、販売の提携等で関わりがあったことで、ブランド力への理解もあり、買収に名乗りをあげてくれたようです。私のチームは、ヨーロッパ企業から買収に関するデューデリジェンスをしてもらいたいという依頼を受け、諸々の調査を行いました。

しかし調査を進めれば進めるほど、ヨーロッパ企業の幹部の顔色は曇るばかり。財務状況はある程度想定の範囲内でしたが、厳しい台所事情に引っ張られて開発予算はかなり絞られており、製品の開発ロードマップにも悪影響を与えていることが分かりました。そのため、交渉の方向性としてはいかに当該事業部を安く買い叩くか、また一定の値引きができないのであれば交渉決裂もやむなしという流れになっていきました。

毎晩行われる「不要な人」の洗い出し

さらに、買収したとしてもしばらく新製品が出せないことが分かっている以上、買収後のコスト体質を絞り込んでおかないと、買収する側のヨーロッパ企業の財務状況にも想定以上の悪影響を及ぼしかねません。そこで様々な部分でのコストの絞り込みが行われる中で、私が担当したのが「不要な人の洗い出し」でした。

夜な夜なヨーロッパ企業の人事担当役員とともに、買収対象となる事業部の人員リストを眺めながら、過去の人事評価、年齢、仕事内容を基準にひとりひとり「要る」「要らない」とラベルを貼っていくという作業は、なかなか生々しい作業でした。比較的40代・50代の社員が多い会社で、勤続年数から考えるに多くの人が新卒から勤めていたのだと思います。その方々が新卒~若手だったころは、当該企業のビジネスは絶頂をきわめており、優良企業と言えば誰もがその会社の名前を思い浮かべるような企業でした。その方々も、20年後によもや買収先の外国人に「要る」「要らない」とデジタルに評価されることになろうとは、想像もしていなかったことでしょう。

事業の撤退や会社清算に伴う割増退職金などは、日系企業においては勤続年数や年齢等も考慮して、それなりの額を乗せていくのが一般的です。今回のケースでは、買収先のヨーロッパ企業が「要らない」と判断した従業員に対して割増退職金を負担するということで買収提案の内容に含めていましたが、足元を見たヨーロッパ企業からの退職金の額は、一般的な額をかなり下回ったものでした。正直、私が買収される側の従業員で「要らない」フラグを立てられた50代の社員だったとしたら・・・住宅ローン等もまだ残っていたとしたら・・・生活はかなり厳しい状況に追い込まれることが容易に想像できるような内容でした。

放り出されても生きていけるよう、キャリアを主体的に考えること

どんなに大手企業であっても、どんなに強いプレゼンスを市場で示していても、その企業が10年後、20年後も同じような姿でいるかどうかは誰にも分かりません。今はビジネス界の王者とも言えるような地位に君臨しているGAFAですら、もしかすると10年後にはリストラの嵐が吹き荒れているかも知れません。例えそうなったとしても生きていけるように、会社にしがみつくことなく、キャリアを主体的に考えることは何よりも大切なんだと、毎晩「要る」「要らない」フラグを立てる作業を行っていたことを思い返すたびに、強く感じます。ぜひ皆様も、どんなことがあっても生き延びていけるキャリアを構築していっていただければと思います。


 

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