キャリアアップやお給料アップを目指して、事業会社からコンサルティングファームへの転職を果たしてきた人の中には、残念ながら思い描いていた通りの活躍ができずにくすぶってしまうという人が一定数います。面接での厳しい選考を潜り抜けている訳ですから、一定の能力や適性はお持ちの上で入社されているはずなのですが、転職後に失敗してしまう理由として「過去の栄光にしがみついてしまっている」という人が少なくないように思います。
特に経験をお持ちになって中途採用として入社する場合は、前職での成功体験は大なり小なりお持ちのはずです。しかし能力があったとしても、コンサルティングファームへの転職は「別業界への転職」であり、仕事の仕方を変えていく必要があります。ここで過去の栄光にしがみつき、自分には(過去成功してきた)能力があるから大丈夫なはずだ、と突き進んでしまうと、うまく活躍できないリスクが高まります。
では具体的に、どのような点で過去の栄光にしがみついてしまうのでしょうか。
アウトプットに対する思考の深さ
真っ先にあげられるのが、アウトプットを作成する際の思考の深さです。クライアントの立場からしてみれば、高いコンサルティングフィーを払ってインサイトや実行プランを作ってもらう訳ですから、自社にはない視点でのアウトプットを求めるのは自然なことでしょう。そのため、過去に事業会社で高く評価されてきた思考力やアイデアのレベルについて、本当にそのままでクライアントからお金をいただくことができるのか?と自分に問いかける必要があります。
もちろん中には事業会社の時代からコンサルタントに求められるレベルのインサイトを出し続けてきたという方もいるでしょうが、盲目的に「自分は大丈夫なはずだ」と信じることはリスクでしかありません。ベタではありますが、求められる水準に達しているのか自分の上司と丁寧にすり合わせる、もし期待値に達していない場合はどのようにキャッチアップすればよいか謙虚に考える、といった姿勢が重要でしょう。
アウトプットの表現力
コンサルタントは、良くも悪くもパワーポイントの質にこだわります。一度でもコンサル歴を長く経験した人からパワーポイントのレビューを受けたことがあればお分かりの通り、各オブジェクトの位置や色使い、メッセージの作り込みなどなど、徹底的にロジカルに叩かれます。その品質の追求が良い・悪いというのは横に置いておくとして、これはコンサルティングファームの文化と呼んでも差し支えないでしょう。
私自身、事業会社からコンサルティングファームへの転職経験者の立場として、コンサルタントがここまでパワポの質にこだわる理由のひとつはパワポの活用方法にあると思います。事業会社であれば、周りの人とはそれなりに長い期間一緒に働いてきたことが多く、社内用語や考え方の部分で「共通言語」のようなものがすでに出来上がっています(はじめましての他部署の人相手でも、同じ会社である以上共通言語が通じることが多い)。そのため、パワポへの落とし込みが多少ラフでも、共通言語をベースに議論がスムーズに進みやすいという大前提があります。
しかしコンサルタントは、ついこの間知り合った人と小難しい議論をしていく必要があり、議論の土台はほとんどありません。そのため少しでもメッセージが雑に書かれていると共通の理解を作り出すことができず、いきなり議論がスタックすることになります。さらに、クライアントは一回一回の会議の場でシビアにコンサルタントを評価していますので、ちょっと間違えたから次で挽回、といった態度で臨むわけにはいきません。かくしてコンサルタントの作るパワポは凝りに凝っていくことになります。
凝ったパワポこそ最高だ、というつもりは毛頭なく、時間をかけて作り込むのが適切な場合、クイックに仕上げていくことが重要な場合の両方があります。単にコンサルタントのお仕事は前者が求められることが多い、ということですが、いずれにせよ事業会社から転職した際には、これまでのパワポの作り方では社内レビューを通らないかも知れない、と捉えた方が良いかも知れません。
ついていけるか分からない、と思ったら
以上で見てきた通り、コンサルファームへの転職は他業種への転職となる訳ですので、前職のままの仕事のスタイルでは多少なりともフィットしない部分が出てきます。そのため転職後は新たな仕事の仕方に早く慣れるように心がけていただくのが大事だと思うのですが、もしついていけるか分からない、という場合には、転職活動の段階から転職エージェントに正直に相談してみるのが良いと思います。数々の転職者を見てきたエージェントであれば、似たような経歴を持った転職者の体験談など、参考になるお話をしてくれると思います。もちろん、コンサル転職に強いエージェントの方がより具体的なお話を期待できますので、エージェント選びも重要になるでしょう。
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