クビになったコンサルタントが行く末とは

コンサルの働き方

昔に比べるとだいぶ穏やかになってきたとはいえ、コンサルティングファームはやはり実力主義の側面が強いと言えます。職位やお給料に見合うだけのパフォーマンスを出せなければ、人事評価は大きく下がりますし、低い評価が続くとクビの対象にもなりかねません。コンサルファームの社風はUp or Outと呼ばれる所以でもあります。

事業会社からコンサルティングファームへの転職を考えている方にとって、首尾よくコンサルファームへの転職ができたとしても、万が一自分がコンサルファームに合わなかったらどうしよう、と心配されるのも無理はないでしょう。この手の話題は週刊誌で「高給取りの末路」といった形で面白おかしく取り上げられることはあっても、実際にクビになってしまった人がその後どうするのかという情報はほとんど語られません。そこで、ここでは少ないながらに私が見てきた「不幸にもクビになってしまったコンサルたちが、その後どうしているのか」という実例をご紹介したいと思います。

クビになるまでのプロセスとは

コンサルティングファームにおける「肩叩き」とは、実際にはどのようなプロセスを辿るのでしょうか。ファームによって呼び方は変わるようですが、一般的にはローパフォーマーをクビにするプロセスのことを「PIP=Performance Improvement Program」と呼びます。読んで字のごとく、直接的にクビにするという表現ではなく、あくまでローパフォーマーに対して会社から積極的なサポートを与えることできちんとパフォーマンスを出してもらうことが主眼に置かれています。PIPを通じてもパフォーマンスが改善しない場合のみ、やむなく退職勧奨が行われます。

PIPの対象になるかどうかは、人事評価によって決まります。細かな人事評価のプロセスはファームごとに違えど、大体は職位ごとに「求められる能力・仕事のレベル」が定められています。プロジェクトごとや、四半期・半年ごとといった周期で定められたレベルに対して点数がつけられ、それが昇格・昇給・ボーナスの額の算定に使用されるのが一般的です。大体の目安として、半年~1年を通じて特定の職位で求められるレベルに大幅に達していないという評価が付く時、PIPの対象としてリスト入りします。

PIPの対象となると本人にも通知がなされた上で、カウンセラーや上司から仕事やパフォーマンスに対する継続的なアドバイスや、内部・外部の研修受講を推奨されます。またアサインされるプロジェクトについても、いつも以上に本人の適性とプロジェクトの性質を見極め、うまくパフォーマンスが出せる環境を提供できないかといったケアがなされます。総合ファームの場合は、チームを変えることによってパフォーマンスが改善しないか、といった試みもなされます。

PIP対象となってさらに3か月~半年が経っても、まだパフォーマンスが改善しない場合は、残念ながら退職勧奨がなされることになります。

実際にPIP対象となった人の行く末は

私自身それなりにコンサル業界でやってきた中で、PIPの対象となってやむなく退職を勧められた人を何人か見てきました。それらのPIP対象となった人は、実際にどのような行く末を辿ったのでしょうか。

そもそも母数が少ないため、振れ幅は大きいのですが、私が見てきた中でPIP対象となって見事に復活できたという方は決して多くありません。むしろPIP対象の後に退職勧奨によってファームを去る人の方がほとんどです。やはり半年~1年間の中でパフォーマンスが上手くでなかった人がPIP対象となる訳ですから、いかに手厚いサポートが与えられたとしてもそこから挽回することは正直それほど簡単ではないのでしょう。

とは言え、ファームを去った方々の後のキャリアを見ていると、そんなに悪いものではなく、むしろ好転している方も少なくないように思います。あくまで体感値ですが、他のファームに移る方が半分、事業会社に転職する方が半分くらいでしょうか。PIP後の転職でうまくいく理由を想像するに、やはり一度PIP対象としてパフォーマンスにクエスチョンが付くことで、自身の得意分野や今後どのようなキャリアを歩むべきかというのを、より一層深く考えるようになるのではと思います。結果として自身がより活躍できそうな場をしっかり見極めようという姿勢で転職活動に向かうことで、より良いキャリアが歩めるようになるのではと思います。現に、あるファームでPIP対象となり、その後別のファームに移った方が、新天地でしっかりパフォーマンスを出すというケースも見聞きすることがあります。

コンサル業界へのチャレンジは大いに意味がある

コンサルファームはある程度実力主義ゆえに、パフォーマンスが出せないとPIPの対象となるリスクは少なからず存在します。しかし、実際にPIP対象となった方を見てもその後しっかり別の会社で挽回できているケースの方が多いことを考えると、コンサル業界へのチャレンジには大いに意味があるのではと思います。そのため、事業会社に勤める友人からコンサルファームに行くべきか悩んでいるという相談を受けたときは、私は「チャレンジする価値はあると思う」といつも答えています。

もちろん自分に合うファームに行くことが重要になりますので、その辺りはしっかり転職エージェントを活用して情報収集し、活躍しやすい場所を見定めることが重要です。

何かの参考になれば幸いです。