事業会社からコンサルティングファームへ転職する際、これまでの経歴や面接での結果に応じて、入社時にどれくらいの職位になるかが決められます。多くの場合は「この職位でオファーを出します」と確定情報として伝えられるのですが、しばしば「この職位でオファーを出せますが、ひとつ下の職位で入社されますか?」という相談をファーム側からされることがあります。
キャリアアップを第一に考えている方にとっては、わざわざ職位を下げて入ることに何のメリットがあるのかと訝しんでしまうかも知れませんが、職位を下げた転職には相応のメリットがあります。現に私の身の回りでも、いったんひとつ職位を下げて入った人が少なからずいます。ここでは、職位を下げて入ることのメリット・デメリットについて見ていきたいと思います。
メリット1:助走期間を長くとりやすい
事業会社からコンサルティングファームへ転職する際、ロジカルシンキングやドキュメンテーションと言ったコンサルタントとしての基本的なスキルや、クライアントに対する振る舞いなど、ベーシックなスキル・振る舞いはイチから学ばなければなりません。コンサル未経験の方がこれらをきっちり身に着けるためには想像以上に時間と努力が必要であり、ここの壁が突破できずに苦労する中途採用者は少なくないのが現実です。
しかし職位を下げて入社すれば、必然的に求められる仕事の水準も下がりますので、コンサルとして求められるレベルへのキャッチアップが比較的容易になります。またクライアントから見た時にも、各職位ごとの単価はかなり大きいために、職位間での期待値の大きさにはそれなりの差があります。そのため、職位が下がればクライアントからの目線も相対的に下がりますので、飛び越えるべきハードルが易しくなるというメリットがあります。
もちろん、ハードルが低いからと言って低いクオリティの仕事をしていればいいという意味合いではありませんが、その期間を使ってコンサルタントとしてのスキルや振る舞いをしっかり身に着ける余裕ができるのは、転職者にとっても非常にありがたいはずです。
メリット2:内部昇進によって自信がつきやすい
面接の場では複数人ができうる限りの工夫をして、候補者の経歴やスキルを正しく測定しようと努めています。しかし、その人のスキルを見るためには、一緒に働く以上に正確な測定方法はないでしょう。
そのため、いったん職位を下げて入ったとしても、仕事ぶりからすぐに昇進しても良いと判断されれば、コンサルタントとして活躍できるだけのスキルを持っているという何よりの証拠となります。現に職位を下げて入社する場合には、その職位のレンジの中でも上位層として採用することがほとんどですので、しっかりと成果を出せば半年~1年で昇進する例も珍しくはありません。
またあまり考えたくない事態ではありますが、一例として職位を下げて入社したとして、昇進に時間がかかってしまった場合には、職位を下げたこと自体は大いに正解だったと言えるかも知れません。コンサルタントの働き方を身に着けるのに時間がかかってしまうとこのような例に当てはまってしまうのですが、上の職位で入っていたらもっと余計に苦労していたかも知れないのです。
デメリット:短期的にはキャリアダウン、だが。
職位を下げて入社することの分かりやすいメリットとしては、短期的に見ればキャリアダウンとも捉えられかねないことでしょう。評価されているうちに昇進できるだけ・職位を上げれるだけあげておくという考え方もありますし、そもそも人によっては自分は十分にコンサルタントとしてやっていけるはずだからわざわざ遠回りする必要なんかないと考える方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、中長期的に考えれば半年~1年の差というのは無視できるレベルのものではないでしょうか。また、職位を下げて期待値をコントロールしたうえで入社し、その職位で求められるレベルをきっちりとこなせば、自然と周りからの評価も高まって中長期で見たらほとんど変わらないスピードで昇進していくという例も数多くあります。逆に背伸びしてしまったがゆえに、入社当初はあまり活躍できずに能力に対して疑問符がついてしまい、あとあと苦労することになってしまった・・・という事例も見られます。
そういった意味では、むやみやたらと職位を下げて入ることを推奨する訳ではないものの、ご自身の経歴とコンサルタントとして求められるレベルとを勘案し、リスクの少ない道を取るというのもひとつの選択肢ではないでしょうか。
信頼できる転職エージェントともよく相談すること
コンサルファームによっても、各職位に対して求められるレベルは少しずつ異なりますので、どの職位で入社すべきというのは信頼できる転職エージェントともよく相談して決めるのが良いでしょう。経験値のある転職エージェントであれば、あなたの経歴からこのファームではこれくらいの職位が妥当ではないか、といった勘所を持っています。そういったフィードバックも踏まえながら、ご自身に合った形で転職活動をされることをお勧めします。
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