事業会社からコンサルティングファームに入社すると、働き方の違いから様々な壁が待ち受けています。その代表的な壁のひとつが、議事録の作成です。いやいや母国語以外の会議でもない限り議事録なんてただの事務作業でさっさと終わるでしょ…と取り組んだ結果、マネージャーからのレビューによって修正箇所だらけ。しかも会議をおうごとに雪だるま式に増える借金の如く議事録タスクが積もっていき、夜遅くまで議事録とにらめっこしているという光景は、珍しくありません。
しかし、幸いにも議事録スキルは転職する前から練習することが可能です。コンサルファームに入社すると、あれやこれやと覚えなければならないことが多い中で、その内容を先取りしておけるというのはスタートダッシュに非常に役立つでしょう。ここでは、コンサル流の議事録の考え方、取り方について考えてみたいと思います。
議事録は実は高度な成果物のひとつ
議事録の難しさは、会議の内容をすべて漏れなく書き起こすことができれば良い、というものではないという点にあります。コンサルのお仕事は、おおざっぱには内部メンバーでイシューに対する解決策を検討し、それを会議等の場でクライアントに意志決定をしてもらって前に進めていきます。その中で議事録の持つ機能は、会議の場で何が意思決定されたか(もしくはされなかったか)、またその理由と背景を形のあるものとして残すという点にあります。
その機能を考えた際に「優秀な議事録」とは、プロジェクトを前進させるにあたり必要な意思決定が、どのようになされたかが明確に理解できるものです。対して「使えない議事録」は、プロジェクトを進行させるうえで不可欠な意思決定が網羅されていなかったり、結論だけしか書かれておらず「なぜそのような意思決定がなされたか」が分からないものだったりします。
新米コンサルタントにとって議事録が難しい理由のひとつは、どの意思決定がプロジェクトにとって重要なものかが分からないという点にあります。例えば会議の中で3点の意思決定がなされた際、どれが最も重要で一番スペースを割いて事細かに議論の内容をメモしておくべきか、重要度が低いため結論だけをさらっと書いておけばいいか、プロジェクト全体の流れが分からないと判別が難しいでしょう。結果として「すべてを全力で書こうとして、時間がむちゃくちゃかかってしまう」か「取捨選択がうまくできず、重要な内容を漏らしてしまう」という事態につながることが良く起こりえます。
また、意思決定が「どのように」なされたかを記録しておくのも、かなり難しいものです。クライアントによっては「誰が発言をしたか」が意思決定の中でも重みを持つ場合もあれば、全員の合意形成を重んじる場合もあります。前者であれば「意思決定に一番影響する人物」の発言はきっちり取っておく必要がある一方で、後者の場合は「ディスカッションの過程を分かりやすく整理し、合意形成プロセスを見せる」ことが、議事録を見た時の納得感の醸成につながります。
このように、プロジェクトの進め方やクライアントの状況を見ながら、会議の中でやり取りされた情報を適切に取捨選択し、かつそれを分かりやすく構造化してまとめていくのが「議事録」という成果物です。こうかみ砕いて書いてみると、なかなか厄介な代物であることがお分かりいただけるのではないかと思います(私もいまだに作成に時間がかかります・・・)。
「録音」「単純な文字起こし」ではダメな理由
Web会議システムには録音機能が標準装備されていますし、リアル会議でもわざわざICレコーダーを買わずともスマホで録音できる時代です。ましてや録音データから文字起こしをするサービスの精度も格段に上がっているこの時代に、なぜ手作業で議事録作成が必要なのか…前節でみてきた議事録の役割を考えれば、その答えは明確でしょう。
また、録音データや文字起こしのテキストはどうしても検索性が悪いため、実務上扱いづらいという問題もあります。しっかり構造化された議事録は、10秒もあれば重要な意思決定の結果とその理由が分かりますが、録音データでは該当箇所を探し当てるだけでも時間がかかります。また、該当する箇所の議論を最初から最後まで聞かないと結論が分からないということもしばしば。そんな手間のかかる作業を、あなたよりもお給料が2倍も3倍も高い上司にさせる訳にはいきませんし、ましてやクライアントに強いることはご法度中のご法度です。
もちろん、ご自身のメモとして録音を残しておくというのは非常に重要です。最初は慣れない単語ばかりでメモを取るだけでも精一杯どころか、メモを取ることすら満足にできないかも知れません。録音さえあれば、あとで何度でも聞き直すことができますし、またご自身で意味が分からなくても上司に録音を聞かせて意味を訪ねることもできます。自衛のための録音はしっかりしておきましょう。
良い議事録を早く仕上げられるかは会議前に決まっている
では、議事録を上達させるためには、どうすればいいのでしょうか?まずひとつは、とにかく場数をこなすことです。これはぼんやりと会議に出るだけではダメで、議事録を書く回数をこなしていくことが重要です。そういう意味では、議事録はコンサルに転職をする前から練習できるコンサルスキルですので、転職を考えている人には意識的に議事録を作成することをお勧めしています。
そしてもう一つ重要な点は、会議の前にあります。議事録はプロジェクト進行上の重要な意思決定を、そのプロセスとともに記すものですので、今回の会議で審議する意思決定事項は何なのか、それがなぜプロジェクト進行上重要なのかを会議前に理解しておくと、議事録の作成が各段に楽になります。また、大体のコンサルタントは会議の前に「この意思決定事項の落としどころはこの辺り」というシナリオを想定して臨みますので、上司に「落としどころはどこを考えているか」を先に聞いておくのも有効です。想定通りの落としどころに行けばメモは非常に楽ですし、想定外の方向に議論が飛んだとしても、「これは想定外だから細かくメモしておこう」と対処もしやすくなります。ぜひ準備をしっかりしてから臨むようにしてみてください。
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